おまけの一日ブログ 〜Too Late To Die 〜

齢27を越えなおも余生を生きる一会社員の独り言。

黄前久美子はパンク・ロックである。

リズと青い鳥」公開よりはや幾日。

 

(一部)ツイッターのタイムラインはリズの残滓に塗れ、ついに今日 本編の続編にあたる「劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」の公開が正式発表され、盛り上がりを見せる ユーフォ界隈。

 

この盛況を牽引しているのは誰か?

無論、主人公たる黄前久美子だ。

だから今日は、黄前久美子について書く。

書きたいから書く。それだけ。

 

響け!ユーフォニアム はどうしたって、

黄前久美子の物語なんだ。

 

 

 

黄前久美子は、普通の人。

 

等身大、なんて言葉すら過剰な装飾に思えるくらい、本当に普通の高校生。

 

特筆できるほどの主体性・行動力を持たず、かといってただの観測者に留まるでも無く、心の内にモヤモヤを抱えてそのやり場に困惑する、ただの高校一年生。

 

そのモヤモヤ具合が、やけに刺さった。

 

 

人と人との関わりに生じる違和感。

 

大人が子供に向ける期待と言外の強要。

 

進むべき道とやりたい事。

 

そもそもやりたい事って何なのか。

 

 

いい歳になった今、向き合わずにいなしてきた事を改めて突き付けられる、青くて苦い閉塞感。

 

それに立ち向かうでもなく、無視もできなく、抱えたまま進んでゆく黄前久美子に、たぶん私は安心を見ていた。

 

答えは無くても人生は続くし、続けなければいけない。

 

そんな生き方を卑下も美化もせず描いていたから。

 

 

 

でも1期12話。

「わたしのユーフォニアム」で、黄前久美子は気付いてしまう。

 

理屈で蓋をした熱に。

内に燻る衝動に。

抗い難い欲望に。

 

 

それまで何となくある程度こなしてきた久美子に、初めて訪れた明らかな挫折。

 

 

「あんたちゃんと勉強してんの?」

「…お姉ちゃんに関係ない」

「部活ばっかして。今から真面目に勉強しとかないと大学入れないよ」

「お姉ちゃんなんて受験で吹部辞めたくせに希望の学校いけなかったじゃん。意味ないよ」

「うるさいな、音大行くつもりないのに吹部続けてなんか意味あるの!?」

「ある!!意味あるよ!」

「どんな意味よ?」

「あたし、ユーフォ好きだもん!!」

「はぁ?」

「あたし、ユーフォが好きだもん!」

「…へぇー。えらいね」

 

 

好きだから、悔しい。

上手くなりたい。誰にも負けたくない。

 

それはおそらく、初めての執着。

 

周囲のゴタゴタも過去も将来も取り払った、素直な感情。

 

 

気付いてしまった黄前久美子は、ここから真っ直ぐに進んでゆく。

 

紆余曲折あるにせよ、またモヤモヤを抱えながら、いちばん大事なものを守りながら歩んでゆく。

 

 

 

 

 

かつて、Sex Pistolsジョン・ライドンは言った。

「ははっ、騙された気分はどうだい?」

 

そうだ、これは物語であって現実ではない。

でも、こんな物語がある、ということが救いになる。

黄前久美子は気付けたのだ。

答えはたぶん、まだどこかにある。

 

 

 

The Clashジョー・ストラマーは言った。

「月に手を伸ばせ。たとえ届かなくても」

 

月はただそこにあって僕たちを見下ろしている。

雑音に紛れてほんとの感情はいつでもそこにある。

何度見失っても、きっとあるはずなんだ。

 

 

 

 

パンク・ロックとは、閉塞を破壊する衝動の発露である。

 

いちばんシンプルな衝動に身を任せることを決めたその時、黄前久美子は確かにパンク・ロックになり、響け!ユーフォニアム は 彼女の物語になったのだ。