おまけの一日ブログ 〜Too Late To Die 〜

齢27を越えなおも余生を生きる一会社員の独り言。

「リズと青い鳥」と「ピンポン」の親和性

何かしらかこつけてリズについて語りたい、というのは否めない。

でもちょっとある気がするのでとりあえず書いてみる。

リズと青い鳥」と「ピンポン」の話です。

 

リズで描かれる希美とみぞれ。

ピンポンで描かれる星野と月本。

結構近しくて、並べてみると面白いのではないかと。

 

・星野と月本

幼い頃から卓球で非凡な才能を発揮し、クラスの中心にいた星野(ペコ)。

寡黙さ故にイジメられる月本(スマイル)。

おそらくは何の気なしに、星野は月本を卓球に誘う。

笑わないから"スマイル"のあだ名を付けられた月本は、卓球を始めて一度だけ笑顔を見せる。

真逆な性格の二人を、卓球が繋ぐ。

 

・希美とみぞれ

誰とでも親しくなれて、明るく活発な希美。

内向的で、感情を表に出さないみぞれ。

希美の誘いで、みぞれは吹奏楽を始める。

みぞれにとっての世界は望美によって開かれ、希美によって始まり、希美はみぞれの全てになる。

みぞれにとって吹奏楽は、希美と繋がるための唯一の手段だった。

 

 

・世界の反転

月本は静かに才能を表し始める。

高校一年の夏。星野を完封した選手を、月本は圧倒する。

星野にとって月本はいつまでも、後から自分に着いてくる存在だった。

星野は現実を受け入れられず、ラケットを捨てる。

 

みぞれもまた、希美を越えてゆく。

籠から放たれた青い鳥は、羽を広げ大空へ飛び立つ。

青い鳥を見遣る希美は、その圧倒的な演奏に打ちのめされ、初めてみぞれを特別な存在として意識する。絶望の対象として。

 

 

 

・その先へ

「ピンポン」では「リズ」で描かれていない"その先"の物語がある。

月本の実力に打ちのめされた星野は、紆余曲折の末 再び卓球に向き合う。

月本は何も言わずに星野を待ち続ける。

かつて自分を救い上げてくれた"ヒーロー"が帰ってくることを。

 

そして県大会決勝の舞台。

コートに立った星野に背を向け、月本は静かに呟く。

「おかえり、ヒーロー」

 

 

・希美のこれから

「ピンポン」は星野の帰還で大団円を迎えた。

では「リズ」はどうかといえば、たぶんそうはなり得ない。

 

取り残された希美は、これから前を向いて歩めるのか。

 

 

「リズ」の原作者 武田綾乃さんはユーフォシリーズを書く上で、

「努力は報われる。ただしそれは本人の望む形とは限らない」

というルールを置いている、と語った。

 

 

みぞれの努力(無自覚な努力ではあるが)は、希美がみぞれを一個人として強く意識したという点で、残酷ながらも大きな一歩として実を結んだと言えるだろう。

 

希美の物語は、希美のこれからはまだ紡がれていない。

 

 

爽やかな後味の「ピンポン」と、ざらつく焦燥を残す「リズと青い鳥」。

 

並べることで際立つ、青春の光と苦味。