続:リズと青い鳥
先の投稿にて 「山田尚子監督の新作」としてのヤバさを書き殴ったので、今度は作品サイドからディグってみる。
響け!ユーフォニアム シリーズの大きな魅力に、後ろ暗い心の描き方 があると思う。
ユーフォは、ちょっとイヤな「あるある」で満ちている。
大人が子供に向ける無言の圧力。
"友達"と"知り合い"の明らかな線引き。
本音は隠して当たり前、という生き方。
見ない振りで何気なくやり過ごしている、日常における少しの後ろめたさを不意に突きつけてくる。
そんなちょっとイヤな共感、「陰」の部分のリアリティとさり気なさが、受け手を第三者ではなく当事者に引き込む。
リズと青い鳥 で描かれる希美とみぞれの関係性は、ユーフォの「陰」の部分の最たるものだと思う。
依存。羨望。嫉妬。諦め。
誰でも持っていて、それでいてひた隠す。
向き合いたくない感情に、この物語は爪を立ててくる。
引き裂くでもなく、緩やかに引っ掻いてくる。
ユーフォシリーズで度々描かれるテーマに、「絶対的な力の差」がある。
久美子が、葵が、香織が。
圧倒的な力量差に直面したときの行動が、人となりを定義する。人間味が滲む。
二人のたどり着く結末に、得心する人、首傾げる人、それぞれあるだろう。
それはおそらく、自分の後ろ暗い感情に対する向き合い方で解釈が変わる物語だ。
陰を照らす光に手を伸ばすのか、ただ見送るのか。
そんな二人の姿に何を思うか。
それが リズと青い鳥 という映画だ。