リズと青い鳥
4月21日。
「リズと青い鳥」が公開される。
TVアニメ2クール、および劇場版2作品を経ての「響け!ユーフォニアム」シリーズの新作アニメーションだ。
先日 本予告が解禁された本作、公開まで3週間に差し掛かっているが、ここでは「リズと青い鳥」がいかにして名作たり得たかを書き殴りたい。
名作なんだよ。予告観れば分かる。
①心の機微を積み上げる物語の集大成
本作の監督は山田尚子さん。
劇場版としては「映画 けいおん!」、「たまこラブストーリー」、「映画 聲の形」から4作目の監督作となる。
上記3作品で徹底的に、またブラッシュアップして描かれてきたのは、心の機微に寄り添い、一つも漏らさず視聴者に伝達するという視点だ。
全ての画面は、そこにある人物の心の動きをいかにフィルムに焼き付けるか、に執心されている。
1人残される後輩へ曲を送る彼女達の揺らぎ、不安、覚悟。
誰より大切な友を送り出す、親友としての正負入り混じる心持ち。
過去に囚われて踏み込めない少年が、静かな足掻きの中で見出した新たな一歩。
これらを登場人物に語らせるのではなく、視線や仕草ひとつ、あるいは風景と音で浸透させる。
全てを言語のみではなく視覚・聴覚含めた五感によって、言わば無意識にも訴えかける、染み込ませる。という手法にこだわり続ける作家だと思う。
「聲の形」公開時の監督インタビューより引用する。
「アニメって伝えるための手段の塊で。そのすべてが一つ一つのパーツとして分解できると思うんですよ。動き、色、カット割りとか。」
また、本作の監督インタビューから引用する。
「この作品は繊細な心情、心の積み重ねが重要なので、「悲しいから悲しい表情をする」と言う風に記号的な芝居付けをしないよう気を付けました。
〜中略〜
一歩一歩日々を積み上げている彼女たちの尊厳を守れるよう、表現の近道を選ばないことが大切な事でした。」
これまで過去作で培った手法の集大成が、「リズと青い鳥」に結実する、している。と断言したい。
②優しい世界
山田監督の描く世界は、常に優しさと受容に満ちている。
「全ての存在を肯定すること」が、通奏低音として物語に響いている。
印象的な「聲の形」公開後の監督インタビューを引用したい。
「将也たちはみんなそれぞれ悩んではいるけど、世の中や世界までは悩んでいない。だからその世界はお花も咲くし水もキレイだしっていうところを描きたくて。あとは些細なものでいいので、お花みたいに美しいものや儚いものを挟んでいくことで、彼らが生きている世界をいろんな情報で形成していきたいなと考えていました。地道な努力って感じですね(笑)。小さな積み重ねで、何か精神作用に訴えることができればと思っています。」
加えて「聲の形」のコメンタリーにて、山田監督は以下のように発言している。
「良い悪いを決めるのは作り手じゃないので。ただありのままを映して、どう受け取るかは皆さんに委ねたい。」
聲の形に限らず、切り出す映像ひとつひとつが、美しく優しい。
それは恐らくは、山田監督自身の願いでもあるではないかと思う。
「世界はこんなにも美しい」と信じている。信じてほしい、という投げかけではないかと。
「リズと青い鳥」で描かれる希美とみぞれのこころは、たぶん美しいだけではない。
それをただ包み込む映像がそこにはあり、その視点をこそ僕たちは"優しい"と感じるのだろう。
そこに余計な押し付けや意思は介在しない。
だからこそ居心地がよく、何度でも観たいと思うのだ。
「リズと青い鳥」より 山田尚子監督について、という文になってしまったが、「リズ」だからこそ!というところがまだまだいくらでもあり書き切れないので、その辺はまた別途ということで、まずはひとつ。