おまけの一日ブログ 〜Too Late To Die 〜

齢27を越えなおも余生を生きる一会社員の独り言。

とにかく「煽りV」を語りたい。

飽きもせずにまたPRIDEの昔話。

 

PRIDE「勝手にベストバウト」に続いて、今回は「煽りV」について語りたい。
 

 

「煽りV」とは”煽りVTR”の略で、ボクシングなんかの試合前に流れる、

A:「なんだコノヤロー」
B:「ふざけんなバカヤロー」
みたいなやつをイメージしてもらえれば、「あぁ、あれね」となると思う。
 
「あれの何が楽しいのか」とも。

 

 

PRIDEのそれは、今イメージしていただいた”あれ”とはだいぶ違う。
 
それは失笑を誘うチンピラの問答劇では無く、
時に熱く、時に楽しく、時に切ない物語で、観客・会場の空気感を作り上げる、洗練された一つの映像作品である。
 
 
他の格闘技、スポーツ番組とは明らかにセンスを異にする「煽りV」が、選手、試合と共にPRIDEにおける欠かせない一要素だったことは、一時制作から離れていた映像ディレクター佐藤大輔氏とナレーション立木文彦氏の復帰の際、会場でそれがデカデカと発表され、あまつさえ大歓声で迎えられたことからも疑いようのない事実である。
 


数多のPRIDEファンから愛され、時に試合すら超える熱を生み出した名作の数々を紹介していく。
 
こんな映像だよ、というコメントを好き勝手に書いているので、興味が持てたらぜひ観てみてください。
 

 

 

 

 

 

 

美濃輪育久vsミルコ・クロコップ

(PRIDE 無差別級GP1回戦)
動画:https://youtu.be/kA-aURidxNI

 

 

気付けばどこかへ置いてきた。

いつしか無かったことにした、「将来の夢」。


本気の「夢」を抱き、目指した人はどれだけいるだろうか。

 

形は違えど「世界で一番強くなりたい」という夢を持ち、今なお追い続ける2人。

 

夢の終点はどこにあるのか。
この戦いの先に、彼らは何を見るのか。

 

5月5日、こどもの日。
夢に折り合いをつけて生きる「大人」には、まだなれない。

 


◆語りたいポイント

 

名作煽りといえばやっぱりこれ。

 

愛すべきキャラクター性でPRIDEファンの心をつかんだ、”リアルプロレスラー”美濃輪育久
対するはGP優勝候補筆頭、”戦慄のターミネーターミルコ・クロコップ

 

下馬評ではどう考えてもミルコ有利。
敗色濃厚な美濃輪をどう煽るのやら、と思っていたところ、予期せぬ切なさMAXシリアス路線。

ノスタルジーを絶妙に味付けするBGM、Fantastic Plastic Machine/「Don't you know?」。

 

結果はやはりミルコの完勝だったが、
この煽りによって、破れた夢の儚さ、また立ち上がる強さというストーリーが生まれ、
凡戦が価値あるものに。

 

会場の空気を作り上げ、試合の意味合いすら変えてしまう。
煽りVの魅力、凄味は、この一本に詰まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

五味隆典vsマーカス・アウレリオ

PRIDE武士道 其の十三 ライト級王者決定戦)

動画:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm1228492

 

 

落日、風前、
火の玉ボーイ。

 

手放すな。守り抜け。
王者の誇り。

 

三度目は、無い。

背水の、防衛戦。

 


◆語りたいポイント

 

怒涛の10連勝で王座獲得の直後、まさかの一本負け。
さらにフジテレビショックによるPRIDE消滅の危機。

 

二重三重の逆風吹き荒れる中、タイトル防衛に臨む五味に思いっきり肩入れした名煽り。

 

「Let Me Entertain You」のフレーズに乗せて、PRIDEの未来を五味に託す万感のエール。

 

五味ファンとしては超ブチ上がったなぁ・・・

(試合は・・・まぁ、うん。)


 

 

 

 

 

小川直也vsエメリヤーエンコ・ヒョードル

(PRIDE GP2004 準決勝)

動画:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm31031183

 

 

今年もまた、夏が来た。


季節は廻り、時は過ぎ去る。

 

それでも、まだ。

 

逃れられない過去と。
変わらぬ期待と重圧に、いま。


再び、向き合う。

 


◆語りたいポイント

 

「人気先行で扱いが実力に見合ってない」
「弱い相手とだけ当ててプロテクトしてるのが見え見え」と、
プロレスを軽視する一部のファンからは、白い目で見られていた小川直也


そんな小川がついに、押しも押されぬ世界最強の男、ヒョードルと戦う。

 

「これで『小川は強い』みたいな扱いがやっと無くなるか。よきかなよきかな」と、勝手に留飲を下げる彼らに向けた、小川敗戦を前提としたVTR。

 

「確かに、小川はこのリングで最強ではないかもしれない。」
「しかし、逃げずにリングに向かう小川を責める理由はどこにもない。」

 

スレたファンに、これは響いた。

 

かくして、観客は気持ちよく小川を応援し、小川は破れてなお価値を下げない、という理想的な状況を、映像一本で作り上げた。

 

煽りVアーティスト、佐藤大輔の真骨頂。
(エヴァへのオマージュ全開なのも個人的にポイント高し)

 

 

 

 

 

 

 

吉田秀彦vsヴァンダレイ・シウバ

(PRIDE GP2003 準決勝)
動画:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm1230052

 

 

”道”を極めた男がひとり。
安寧を捨て、新たな道へ。

 

跳梁跋扈す茨道。
生きて再び帰すもがな。

 

白き道着を身に纏い。
修羅場に赴く男がひとり。

 


◆語りたいポイント

 

日本人では勝てない。
というか、手練れの外国人ですら勝てないのに日本人が勝てる訳がない。
いかに柔道金メダリストと言えど、それは同じこと。

 

その戦いを”修羅場”と称し、死地に向かう吉田を”生贄”と例える、悲壮感に満ちたVTR。
しかしそこに確かに刻まれた、吉田の意志と覚悟。

 

試合でも、柔道を武器に堂々と渡り合い、
さらには不利な打撃でも真向から殴り合いを仕掛けるなど、気の強さを存分に見せた吉田は、敗れたものの会場を大いに沸かせ、男を上げた。

 

煽りVと試合内容が完璧にハマった名勝負。

 

 

 

 

 

 

 

 

五味隆典vs桜井”マッハ”速人

(PRIDE男祭り2005~頂~ ライト級GP決勝戦
動画:https://youtu.be/IR4VvaIEjiM

 

 

世界一。


途方もない夢は、すぐそこに。

 

日本人、ふたり。
頂に立つのは、ひとり。

 


◆語りたいポイント

 

どちらが勝っても日本人初のPRIDE王者誕生。
晦日の頂上決戦にふさわしい、「日本男児が大気圏突破。」の名文句。
「Good-bye,American! Good-bye,Brazilian!」からの流れには、当時死ぬほど興奮したことを覚えている。

 

そして試合も煽りに負けずの名勝負。
言うこと無しのベストバウトだった。

 


・・・なのに、お茶の間にどれだけ届いたのだろう。
年明けの学校。
PRIDEの話題は出ても、この試合は触れられない。

こんなにも素晴らしいものを観たのに、思いを分かつ相手は無し。やれかなし。

 

 

 

 

 

 

 

 

五味隆典vs川尻達也

PRIDE武士道 其の九 ライト級GP1回戦)
動画:https://youtu.be/e5Ht1s-m7bo

 

 

新しき時代。新しき力。
日本が世界に誇る二つの才能。

 

どちらかが消える。どちらかが潰す。

 

無慈悲で、残酷で。
極上の、果し合い。

 


◆語りたいポイント

 

PRIDEライト級GP。
1回戦にして事実上の決勝戦とも言われた、新旧 修斗世界王者対決。

 

絶対の自信と自負ゆえ、火花を散らす両者。
売り言葉に買い言葉。由緒正しき”煽り”V。

 

T-REX20世紀少年」に、「21世紀の殴り合い」のキャッチコピー。

音楽を軸にした構成は、佐藤大輔お家芸

 

 

 

 

 

 

 

安生洋二vsハイアン・グレイシー

(PRIDE男祭り2004 スペシャルワンマッチ)
動画:https://youtu.be/sMUcFjvPopk

 

 

あの日失った全ては。
もう、戻ってはこない。
ただ、確かめたい。
間違ってはいなかったことを。

 

死に場所を見つけた、彷徨える”U”の魂。
これは、鎮魂の物語。

 


◆語りたいポイント

 

UWF」が気になりだしたのは、このVTRがきっかけだった。

 

晦日のビッグイベント。
数多のビッグマッチの中に差し込まれた、よく分からないカード。
歳のいったおっさんvsグレイシー

 

プロレスとグレイシーの因縁の物語。
よく分からないが怪しくて、なんかヤバそうな団体、

UWF」が頭に刻まれた、思い出深い煽りV。

 

 

 

 

 

 

 

 

五味隆典vs石田光洋

(PRIDE男祭り2006 ライト級ワンマッチ)
動画:https://youtu.be/7Kcf92iW1ac

 

 

帰って来る。
火の玉ボーイが、帰って来る。

 

怒りに任せてブン殴る、
ヤバい五味が、帰って来る。

 

年の瀬、紅白、除夜の鐘。
もう一つある、風物詩。

 

今年の鬱憤、今年のうちに。
みそかの祭り、大喧嘩。

 


◆語りたいポイント

 

苛立ちを隠さず煽り倒す五味と、臆せず言い返す石田。

 

いわゆる”普通の”試合前VTRのような舌戦も、
魅せ方ひとつでここまでスマートかつ”寒く”ないものになる。

 

キャラの立つ2人の素材の味を生かした、
シンプルゆえに佐藤大輔のセンスが光るVTR。

 

五味ファンとしては、「なんにもできないと思うよ」の言葉をこの上ない形で有言実行した試合内容も含めて最高。

 

 

 

 

 

 

 

 

田村潔司vs船木誠勝

(DREAM.2 ミドル級GP1回戦)
動画:https://youtu.be/_RUQVIQmBWg

 

 

理想。幻想。夢うつつ。

最強、「UWF」。

 

男は、過去を捨てた。
男は、過去を守る。

 

”U”という過去。
”U”という愛憎。
”U”という螺旋。

 

その物語が終わるとき、二人は。
そして我々は、何を見るのか。

 


◆語りたいポイント

 

伝説、「UWF」。

 

プロレスと格闘技の狭間。
その臨界点に生じた、美学、狂気、幻想。


渦中にいた二人。

それぞれにとっての、「UWF」という狂った季節。

 

いまだに人々の心を揺り動かす、「UWF」という過去。

煽りVという枠を超えた、ドキュメンタリーのごとき大作。

 

 

 

 

 

 

 

 

桜庭和志vs田村潔司

Dynamite!!2008 スペシャルワンマッチ)

動画:https://youtu.be/hoLvpqXsLb8

 

 

最強、「UWF」。
幻想を繋ぎとめた、二人の英雄。

 

時代を背負った、IQレスラー
我が道を行く、孤高の天才。

 

すれ違い続けた二人が、
あらゆる過去と愛憎を経て、ついに交わる。

 

今更闘う意味は。
あるべき結末は。
彼らの中に、答えはあるのか。

 

確かめるために、傷付け合う。

”PRIDE”の忘れ形見。
最後の、真剣勝負。

 


◆語りたいポイント

 

田村と桜庭。

 

グレイシーという呪縛から、日本格闘技界を救った二人。

 

直接対決を望む声は多かったが、”頑固者”田村は首を縦に振らず、実現に至らぬままPRIDEは消滅。

 

時は流れ、全盛期を過ぎた彼らに、対戦を望む声はいつしか無くなり、それは、幻のカードとして人々の心にしまわれた、はずだった。

 


Uインターで同じ釜の飯を食い、袂を分かち、それぞれの道を歩み、共に歳を取った二人。
UWFも、PRIDEすら過去のものとなった今、彼らは拳を交える。


その意味は、その歴史は、このVTRに詰まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いかがだっただろうか。

 

映像が見つからず紹介できなかった名作がまだまだあるので、もし見つかれば更新するかもしれない。

 

 

また佐藤大輔氏は、格闘技以外の”煽りV”も手掛けている。
これらもかなりイカしているので、よろしければ。

特に電王戦が好き。

 

 

・2006 F-1 サンマリノGP OPENING

https://youtu.be/LcX7M9VKDjs

 

 

・第一回将棋電王戦

https://youtu.be/6vUYUr592do

 

・第76期名人戦 佐藤天彦名人vs羽生善治竜王

https://youtu.be/FckuJhbSyRw

 

続・PRIDE私的ベストバウト

という訳で前回の続き、PRIDEベストバウト。

5位から。

 

 

・5位

アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラvsジョシュ・バーネット

(PRIDE無差別級GP 準決勝)

https://youtu.be/8ZIx037KAFo

 

PRIDE史上、最も面白い寝技対決。

 

熟練者同士の試合は、得てして膠着しがち。
技術の進歩と反比例するように、観客に”伝わらない”試合が増える。

 

「まぁそんなもんだよね~。でもな~」というモヤモヤを抱えた総合ファンに、

「寝技も面白いんじゃ!!!」という気概を叩きつけた名勝負。

 

言わずと知れた”柔術マジシャン”ことノゲイラのテクニックと、ジョシュの”キャッチレスリング”が超高次元で見事にスウィングしたこの試合は、まあ動くこと動くこと。

 

一本取りかけてはスイープ、の連続で目まぐるしく攻守が入れ替わり、はたまたスタンドでもKO寸前の打ち合いもあり、最後の最後まで目が離せない15分間。

 

魅せる意識、ではなく純粋に技術の勝負でここまで観客を魅了できることを証明した2人。


ただ、”キャッチレスリング”とは何なのかは未だに知らない。

 

 

 

 

 

 

・4位

ヴァンダレイ・シウバvsミルコ・クロコップ

(PRIDE.20)

※動画なし…

 

PRIDEの歴史は、外敵との闘いの歴史でもある。

 

グレイシーという未知の存在に、”最強”高田が敗れ、桜庭が打ち勝った。
その桜庭の前に、新たな外敵、ヴァンダレイ・シウバが現れた。
英雄・桜庭を破ったシウバは当初完全なヒールであったが、
殴り勝つ明快なファイトスタイルと、絶対的な強さを示し続けることで、次第にファンの心をつかんでいった。


そこに再び登場した史上最強の外敵。

K-1からの刺客、ミルコ・クロコップ
押しも押されぬK-1トップファイターであり、世界最高峰の打撃を持つ男。
それを、かつての”外敵”シウバが、PRIDE代表として迎え撃つ。

 


立ち技か、総合か。

 

時代は格闘技ブームのさなか。
一括りに”格闘技ファン”といっても、K-1=立ち技、PRIDE=総合のどちらかに偏った思い入れがあるもの。
トップ団体の、トップ選手同士の闘いはイデオロギー抗争を巻き起こし、熱狂を呼んだ。
 
 
 
 
異様な熱気の中、試合が始まる。

 

ミルコの左ミドルがシウバを捉える。
初めて耳にする、鋭く、鈍く、重い音。
PRIDEファンに動揺が走る。

 

僅か1発で敗北すら予見させる。
恐怖すら覚える、そんな音。


しかしリング上のシウバは、会場の誰よりも勇敢だった。
そんな蹴りを受けてなお、前に出る。
赤く腫れた脇腹を押して、左右のフックで飛び込んでいく。

 

K-1ファイター ミルコを相手に、寝技ではなく、打撃で勝負にいく。
それは、PRIDEを背負うという矜持ゆえか。

 


試合はドローに終わったが、冷徹無比なミルコと、気迫剥き出しのシウバ、
両選手の味が全面に出た名勝負に、判定決着はむしろ野暮というもの。

 

異種格闘技の、そして団体抗争の面白さ、ここにあり。

 

 

 

 

 

 

 

・3位

アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラvsミルコ・クロコップ

(PRIDE GP 2003 暫定ヘビー級王者決定戦)

煽りV:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm9760864

試合:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm29308796

 

明快な構図、明快な展開、そして劇的な結末。

 

格闘技の面白さが全て詰まった、奇跡のような試合。
格闘技の魅力を聞かれたら多分、この試合を見せる。

 

K-1からPRIDEへ電撃移籍後、強豪を次々と左ハイキックで葬り去り、飛ぶ鳥を落とす勢いで王座戦に乗り込むミルコ。
柔術マジシャンの異名を取る寝技テクニックと驚異的な粘り強さで、数々の名勝負、逆転勝利を生んできたノゲイラ

 

打撃と寝技。

それぞれの”最強”がベルトを争う。

 

 


1ラウンド。


勢いに勝るミルコが、そのままノゲイラを飲み込む。
重く速いパンチが、蹴りが、的確にヒットする。
苦し紛れのタックルも、驚異的な腰の強さで全てかわす。


追い詰められるノゲイラ

ミルコの左ハイが、ついにノゲイラを捕らえる。
倒れこむノゲイラ。間髪入れず追撃を仕掛けるミルコ。
KO寸前で、ラウンド終了のゴング。
 
 


 
 
圧倒的。強すぎる。
誰もが思った。
ミルコが勝つ。

 

 


2ラウンド。


開始直後、一瞬の隙。
懐に入り込み、タックル。
倒れこむ。マウント。もがくミルコ。
腕が、空いた。

 

 

 

文字通り、一度限りのチャンス。

 

ミルコは呆然とし、ノゲイラは神に感謝を捧げる。

 

天国と地獄。
歓喜と絶望。

 

あまりにも残酷、あまりにも無慈悲。
勝者と敗者を分ける、一瞬の分水嶺

 

これこそが、総合格闘技

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・2位

五味隆典vs川尻達也

(PRIDEライト級GP 1回戦)

煽りV:https://youtu.be/e5Ht1s-m7bo

※試合の動画見つからず…

 

 

それは、一太刀を取り合うが如く。

 

 

修斗、新旧世界王者対決。

 


修斗デビューから破竹の勢いで勝ち続け、一気に世界王者へ。
PRIDE参戦後も7戦全勝。満を持してライト級GPに乗り込む、敵無しの”火の玉ボーイ”、五味隆典


「日本人は力では外国人に勝てない」という常識を拒否し、技ではなく力で勝ちえる肉体を作り上げ、五味の去った修斗で世界王座を奪取。
現王者として五味に挑戦状を叩きつけた”クラッシャー”、川尻達也

 

日本人同士による、事実上の世界一決定戦は、その名に恥じぬ至高の一戦。
 
 
 

 
開始直後から、KO必死のパンチの応酬。
薄氷を踏む間合いの取り合いから、先の先を読み合うような攻防が続く。

 

互角の打ち合いの中、五味のボディで均衡が崩れ始める。
徐々に徐々に効き始める五味の打撃。
川尻もローを交えて反撃するが、決定打には至らない。

 

そんな中、首相撲から五味がヒザを出した隙をつく、川尻のタックル。
狙いすましたテイクダウンを、五味は間一髪で逃れる。
川尻に僅かに浮かんだ落胆の色。
その揺らぎを、五味は見逃さなかった。

 

 

怒涛のラッシュで畳みかける五味。
川尻も驚異的な粘りを見せるが、火のついた五味の打撃を浴び続け、ついに崩れ落ちる。

 

 


終わって初めて、息をのんでいたことに気付く。
王者同士の意地と意地。極限まで張り詰めた空気。

日本が世界に誇る、兵どもの殴り合い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・1位

桜庭和志vsボイス・グレイシー

(PRIDE GP 2000)

煽りV〜試合:https://youtu.be/cxvldZxT3EY

 

 

日本格闘技界におけるターニングポイント。

この試合が無かったら、格闘技ブームは起こらず、PRIDEの発展もなかったかもしれない。


格闘技に興味が無い人も「PRIDE」という名前は何となく知っている、という状況は、この試合から生まれたと言えるだろう。

その日、桜庭和志時代の寵児となり、格闘技をメジャーシーンへ押し上げた。

 


前戦でホイラーを破り、ホイス・グレイシーとの対戦に辿り着いた桜庭。


ホイスはUFCを2連覇し、一族の名を世界に広めた張本人であり、ホイスからの勝利は、ホイラーからのそれとは重みが全く異なる。

 

グレイシー側は先のホイラーの敗戦を、「ホイラーはギブアップしていない」として認めておらず、
今回の試合にあたり、ラウンド無制限、レフェリーストップ無し、判定無しという完全決着ルールを要求。


桜庭は「全部相手の望み通りのルールで勝てば文句ないでしょう」と言い放ち、全ての要求をのみ試合に臨む。

 

 


桜庭は躍動した。
寝ても立っても全局面でホイスを圧倒。
隙を見てはモンゴリアンチョップ、炎のコマなどのプロレス技さえも繰り出した。

 

しかし、決定打は出ない。
どちらかがギブアップするまで試合は終わらない。
終わりの見えない無間地獄。
ラウンドが進むにつれて、戸惑いにも似た異様な雰囲気が会場を包む。
 
 
 
 
試合時間が1時間を超えたころ。
ローキックを浴び続けたホイスの足が、悲鳴を上げ始めた。
桜庭のローに、ホイスの足が大きく流れる。
すかさず畳みかける桜庭。
ポーカーフェイスを崩さないホイスだが、ダメージはあまりにも明白だった。

 

 


6ラウンドが終わった。

グレイシー陣営は慌ただしく言葉を交わしている。
異変は明らかだった。

 

セコンドアウトの声がかかっても、ホイスは座ったまま動かない。
レフェリーが歩み寄ったその時、タオルが投げ込まれた。

 

 

 


試合時間、実に90分。

 

グレイシー柔術の創設者エリオは、桜庭と握手を交わし、笑みを浮かべた。

グレイシーが負けを認めた。桜庭が、日本人が、ついにグレイシーを完全に破ったのだ。

 

高田がヒクソンに敗れて以来、続いていたグレイシーの時代。
その呪縛を解き放った英雄、桜庭和志

その時、桜庭は格闘技の歴史を一つ、前へと進めたのである。
 
 
 
 
 
 
あれから19年。

PRIDEは消滅し、格闘技の中心はアメリUFCに移った。

 

Mixed Martial Arts=MMAという呼称が定着し、
スポーツとしての競技化推進と技術向上によって、「総合格闘技」すら過去のものとなった。

 

桜庭vsホイスの特別ルールがいい例だが、
当時の総合格闘技は、今では考えられないほど未成熟な世界であり、ただ美化してよいものでもない。


桜庭はその後、体重差を軽視した興行性重視のマッチメイクにより、選手寿命を縮めたとも言われており、やはりただ美談としてのみ扱うべき物語ではないとも思う。

 


しかし、黎明期ゆえの曖昧さ、怪しさ、混沌によって生まれた狂気じみた熱があったこともまた事実だ。

 

MMAの進化を否定する気は毛頭ない。
しかし、”あの頃”だけにあった熱狂に思いを馳せることくらいは、許されてもいいのではないか、とも思う。

 

 

 

 

 

 

 

長過ぎて引くわ。

 

誰も読まない独り言と思い好き勝手に書き散らかしたが、もし何かの間違いで読んでくださった方がいるとしたら、ぜひ試合を観てみてください。
 

 
 
 
 
次回、名作煽りV編へ続く。

私的PRIDEベストバウトについて語ってみる

という訳でPRIDEのベストバウトについて語りたい。

10試合をランキング形式で挙げていこうと思う。

 

主観でしかないので選手への思い入れが多分に反映されるだろうし、例によって記憶に頼るので誤りもあるだろうが気にしない。

では10位から。

動画があったら適宜リンクを貼る。

 

・10位

五味隆典vsルイス・アゼレード

(PRIDE武士道 其の七)

https://sp.nicovideo.jp/watch/sm1291618

 

"スカ勝ち”の衝撃。


まだそこまで熱心な格闘技ファンではなかった当時のこと、TVを付けたらたまたまこの試合が流れていた。


シウバは知っていたので、シュートボクセって強いらしい、くらいのざっくりなイメージのもと、

「日本人じゃやられちゃうやろな~」

などと勝手なことを思いつつポケーと眺めていると、案の定試合はアゼレードのペース。

パンチとキックの流れるようなコンビネーションで攻め込む。


「やっぱな~日本人は打撃じゃ勝てんから寝技に持ち込むしかないもんな~」

などと知ったようなことを思いつつ、おそらくKO、良くて判定負けかな~なんて予想しだしたあたり。

 

 

あまりにも鮮烈な左右のフック。
それまで、いやもしかしたら今の今でも、ここまで完璧なノックアウトシーンを観たことは無い。

 

 

その瞬間、私の一番好きな格闘家は「五味隆典」になった。
PRIDE史上に残る名勝負ではないかもしれないが、自分にとって大切な試合。

 

 

 

 

 

 

・9位

桜庭和志vsホイラー・グレイシー

(PRIDE.8)

https://youtu.be/eRoRTq4eqvs

 

PRIDEを語るうえで絶対に外せない男。
グレイシーハンター”、桜庭和志

 

 

PRIDEは、”最強”を謳ったプロレスラー、高田延彦の敗戦という、プロレスファンの深い絶望とともに幕を開けた。


信じていた”最強”は、得体の知れないグレイシー柔術なる技術の前に、あまりにも無力であった。
1ラウンド僅か5分足らずで、地に落ちたプロレスの威信。
そこに現れた救世主が、桜庭和志だった。

 

高田が再び同じ相手に、同じ技で敗れたその傍らで、縦横無尽にリングを駆け、勝利を重ねる桜庭。
「プロレスラーは、本当は強いんです。」という言葉に、プロレスファンは一筋の光を見た。

 


期待を一身に受け、ついにこの日、高田を破ったグレイシー一族と相まみえる。
もはや一選手としてではなく、プロレス界を双肩に、リングに立つ。

 

そんな重苦しいシチュエーションですら、桜庭は軽々と乗り越えた。
まるでプレッシャーを感じさせない、自由奔放な戦い。
余裕すら感じさせる、堂々とした試合運び。
それでいて、プロレスらしく”魅せる”ことも忘れない。
真剣勝負のさなかにアイーンチョップを繰り出すその姿は、プロレスラーとしての矜持に満ちていた。

 

 

アームロックが極まり、レフェリーが試合を止める。
歓喜の輪の中で、いつもと変わらぬ笑みを浮かべる桜庭。
グレイシーハンター”誕生の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

・8位

高山善廣vsドン・フライ

(PRIDE.21)

https://sp.nicovideo.jp/watch/sm6982607

 

プロレスか?総合格闘技か?
そんな議論も、勝負論も超越した漢二匹の生き様。
言葉は要らない。ただ心に刻みこむべし。

 

 

 

 

 

 

 

・7位

ヴァンダレイ・シウバvs吉田秀彦

(PRIDE GP 2003 準決勝)

煽りV:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm1230052

試合:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm1293047

 

柔道金メダリスト 吉田秀彦と、PRIDE無敗の絶対王者 シウバ。


PRIDEの醍醐味、異種格闘。

 

 

寝れば吉田、打撃ならシウバという当然の下馬評の中、
シウバは下から三角締めを狙い、吉田はスタンドで真っ向から殴り合う。

 

総合力で勝るシウバが、徐々に吉田を追い詰める。
何発もの拳を浴び、顔は腫れあがり、道着が血に染まる。
気持ちは折れない。折られる訳にはいかない。
道を究めし男の意地が。誇りが。
吉田を動かす。
劣勢の中、吉田は笑みを浮かべる。

 

 

判定は3-0でシウバ。
しかし、不得手な打撃でシウバの懐に飛び込んだその姿に、
道家、ではなく男 吉田秀彦の意地を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

・6位

ヴァンダレイ・シウバvsクイントン・"ランペイジ"・ジャクソン

(PRIDE.28)

※残念ながら動画なし…

 

リアルに犬猿の仲の2人。
かつてPRIDE GP 2003決勝の舞台で、感情剥き出しの殴り合いで会場を熱狂させた因縁浅からぬ2人の、待望の再戦が実現。

 

前回22発の膝蹴りに沈んだジャクソンが序盤から優勢。
ミドル級無敗を守り続けてきたシウバが、徐々に追い詰められていく。


そしてジャクソンの右がシウバの顎をとらえた刹那、シウバの膝が落ちる。
畳みかけるジャクソン、必死に凌ぐシウバ。
1ラウンド終了のゴングは、歓声にかき消されて聞こえない。

 

 

2ラウンド。
絶体絶命の王者が、パンチ一発で流れを変える。
観衆は一瞬の静寂ののち、狂乱した。


動きを止めたジャクソンに、襲い掛かるシウバ。
フィニッシュブローは奇しくも、前回と同じ膝地獄。


完全に失神し、ロープに前のめりに倒れこんだジャクソンの鼻からは、おびただしい鮮血が流れ落ちる。


熱狂する観客。咆哮するシウバ。

 

 

これぞPRIDE。


壮絶、という言葉ですら足りない、獣二匹の殴り合い。
必見である。

 

 

 

 

 

続きます。

PRIDE(総合格闘技)の思い出

突然だが、格闘技熱が高まっている。

時折来る発作のようなものだ。

 

先日、格闘技イベントのRIZINとONE ChampionshipをTVで観た。

朝倉海は強かった。青木真也もまだ頑張っていた。

RENAは可愛かった。

 

しかし。

 

 

 

 

思春期に熱中したものに、いつまでも囚われている。

相変わらず、マキシマム ザ ホルモンを聞いている。

時々、BECKを無性に読みたくなる。

ふと真鍋かをりの画像を検索するなどし、二宮沙樹にも折を触れてお世話になる。

 

 

 

 

 

それらと同じ箱の中に、PRIDEはある。

 

 

今井美樹ではない。キムタクでもない。

浜崎あゆみでもないしもちろんGReeeeNでもない。

総合格闘技イベント、PRIDEである。

 

 

なぜこんなにしつこく書くかというと、Wikipediaの「PRIDE」のページが曖昧さにまみれて大変なことになっており、開く度に「PRIDEっつったら格闘技に決まってんだろおたんちんが!!!!!」と忸怩たる思いに駆られるからである。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%89

 

 

 

 

 

PRIDE(総合格闘技)が、好きだった。

 

 

正真正銘、世界一の格闘技興行が、極東のいち島国で行われていることに心躍った。

 

真剣勝負の世界でありながら、時に笑いあり、時に涙あり、スポーツとエンタメの狭間を揺れ動く微妙なさじ加減も魅力だった。(「PRIDEにもブックがあった」というツッコミは話が逸れるので一旦脇に置く)

 

 

桜庭和志ヴァンダレイ・シウバミルコ・クロコップエメリヤーエンコ・ヒョードルアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ吉田秀彦田村潔司ジョシュ・バーネット川尻達也。クイントン・"ランペイジ"・ジャクソン。五味隆典

 

名前を見ただけでワクワクする。

ビッグマッチが当たり前のように毎回組まれていた。

 

 

 

そしてPRIDEを語る上で欠かせないのが、煽りVと呼ばれた演出映像。

フジテレビ ディレクター佐藤大輔と声優 立木文彦コンビによる、スタイリッシュなアジテーション

正直本編よりVTRの方が面白い、という試合も数多あり、もはや煽りVを観るためにPRIDEを観ていたような気さえする。(TBSのHERO'sとの決定的な差はこれだった。演出がとてつもなくダサく見えてしまい、入り込めなかったのである)

 

ヒョードルvsノゲイラ、ミルコvs美濃輪、五味vsアウレリオ、PRIDE武士道シリーズOPの数々…。

今観ても色褪せない名作ばかりだ。

 

 

 

 

空前の格闘技ブームを牽引し隆盛を極めたPRIDEだったが、運営会社DSE暴力団の繋がり(疑惑?)が突如週刊誌で報道され、事態を重く見たフジテレビが放送撤退。

しばらくは地上波無しで大会を継続したものの、やはり存続は難しく、2007年 PRIDE.34を最後に休止。

それ以降、"PRIDE"の名を冠したイベントは開催されずに今に至る。(ちなみにフジテレビの撤退後、映像ディレクター佐藤氏はフジテレビを退社し、フリーとしてPRIDEの演出に再度就任した。発表の際、会場は大いに沸き、氏の男気を称えたのは言うまでもない)

 

 

 

PRIDE亡き後、拠り所を失ったファンはといえば、一部は後発イベントのDREAM、戦極RIZIN等にPRIDEの幻影を追い続け、大多数は何となく格闘技から離れていった、という感じだろうか。

 

 

私はどっちつかずのまま、思い出したようにRIZINを観たり、発作的にPRIDEの過去の映像を観たりしていたのだが、ここ最近、「有田と週刊プロレスと」のPRIDE関連の回を立て続けに見たせいか、PRIDEについて語りたい欲が異様に高まっている。

 

 

 

そろそろPRIDEの文字がゲシュタルト崩壊しそうなので、次の記事以降で、こんな試合が好き、こんな煽りVが好き、みたいなことを好き勝手に書き散らそうと思う。ひとまず、ここで。

 

 

 

 

 

※なおこの文は完全に主観と記憶に頼って書いているため、正しくないところなどあるかもしれません。

ボケかけたPRIDEファンの独り言として聞き流していただけたら幸いです。

「劇場版 響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」を観た、という話。

それはまさしく好きなバンドの新譜リリースが決まった時の様に。

楽しみにして、心待ちにしていた「劇場版 響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」の公開。

またこの物語を観られる、という幸い。

喜び勇んで、浮き足立って観に行きました。川崎チネチッタ

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと待て、と。

これが待ち焦がれたユーフォの新作か、と。

 

 

 

 

 

 

何の因果かこのページを見て下さっているユーフォファンの方々はここでブラウザバックしていただきたい。

胸糞悪い感想を書き殴ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、私は「響け!ユーフォニアム」がとても好きです。

 

いま出会ったその時を正確に思い起こす事は出来ないくらいに時は経ちましたが、1期1話が地上波で流れたその翌日から、翌週を待ち切れないくらいの思いで以って観かじり、黒沢ともよさんの演技に心奪われ、通り一遍ではない各部員の抱える病的な面倒臭さにやられ、「いやいやここの演出は過剰やろw」とか「こんな奴おらへんやろww」とか言いながらどっぷりと心酔し、劇場版1作目では「まぁまぁ総集編やしこんなもんやろw」と独りごちながら上手くなりたい久美子の思いに改めてブン殴られ、劇場版2作目で「晴香…あすか…」と息絶えそうになりつつ生き延び、リズショックで惨殺された亡骸です。

 

 

1期の途中だったか、原作も全て買い揃え「武田先生…」となって以来、「青い春を数えて」、「その日、朱音は空を飛んだ」等の著作を貪り(「君と漕ぐ 〜ながとろ高校カヌー部」は絶賛読み進め中)、「やはりこの"青春"の切り取り方は唯一無二」と夢中になりました。

 

 

 

今作、「劇場版 響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」は如何でしたでしょうか。

 

青春の1ページとしての強度を保てていましたでしょうか。

 

どうしても、何度反芻しても「これこそが"青春"だ」という確信が得られません。

 

 

 

 

 

新一年組の描き方は、どうしてもいちキャラクターの粋を出てはおらず、物語の都合に合わせて動かされる演者の様に思えてなりません。

 

 

軸となる久石奏も、連綿と連なるユーフォという物語の一端を担うには至らず、只々それらしき起伏に揺蕩うモブの様に私の眼には映りました。

 

 

 

もちろん個々のシーンを観れば、昔からのファンを喜ばせる箇所は多々あったと思います。

 

旧3年生組のこれまでと変わらぬ、いやむしろ発展した繋がりを一瞬で描いたシーンには「あすかおはる…」とほだされかけましたし、安定感に溢れたくみれいのやり取りには「あぁ、やはり変わらぬ美しさがここにはある」と諸手を上げかけました。

 

 

 

 

 

でも、それでいいんですか。

ユーフォに求めていたものはそれですか。

 

 

 

 

 

 

 

ヒリヒリする焦燥と、束の間の答えを見出しながら苦悩しつつ足掻き続ける彼女達の、救いと危うさに満ちた紙一重の言葉では無かったですか。

 

あるいは言葉の外にある、可視化できない不透明な確かな繋がり、揺らぎでは無かったですか。

 

"青春"は、言い表せないからこそ乞い焦がれる甘き瞬きでは無かったですか。

 

分かりやすい表面的な表現に終始した瞬間に、死ぬものでは無かったですか。

 

 

 

 

 

響け!ユーフォニアム」シリーズは、原作が最終章を銘打ち、いよいよ佳境に向かって行きます。魅力的な新1年生が登場すると噂に聞きます(恥ずかしながらこれから読みます)。

 

 

でも。私はアニメーションとしての「響け!ユーフォ二アム」が本当に大好きです。

 

余りに人間味に溢れた彼女たちの物語をこれからも紡いでいただけるなら何度でも劇場に足を運びますし、もしかしたらあるかもしれない立華高校のエピソードが映像化されれば、一も二もなく直ぐに観るでしょう。

 

それは、ユーフォが「人を人として」描く事に偏執的な迄に拘りを持った映像作品だと信じているからです。

 

 

頭のおかしなファンの独り言でいいんです。

でも、この想いを映像化してくれたという、一方的で全幅な信頼を寄せている頭のおかしなファンがいるという事は、きっと他にも同じ想いを抱いている方がいるのではないか、と思ってこの文を綴ります。

 

次回作があるなら、もちろん観ます。

信じさせてください。この物語を。

「リズと青い鳥」Blu-ray&DVD発売に際して。

遂にリリースを迎える。

待ちわびたXデーがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

といった趣か。

 

しかし果たして本当に待ちわびていただろうか。

この物語に再び真っ正面から向き合えるだろうか。

 

映画なら激流に飲まれたまま川岸で朽ち果てればよかったが、今回はDISCだ。

一時停止もコマ送りも思うがままだ。

その覚悟は出来ているか。

 

 

 

みぞれの無自覚な残酷さを受け止める覚悟は出来ているか。

 

対象の一挙手一投足すべてに無邪気な愛情を向ける様を。へにゃりと浮かべる笑みを。

自らの中の"傘木希美"という虚像に注ぎ込む様を。

 

 

 

 

 

 

 

希美の出口の無い苦悩を受け止める覚悟は出来ているか。

 

自負とプライドをじわじわと侵され、それでも口元を歪めることしか出来ない遣る瀬無さを。最後まで自分の求める答えを得られなかった苦しみを。

自らが生み出した"鎧塚みぞれ"という巨像に飲み込まれる様を。

 

 

劇場公開からはや幾ヶ月、結局この物語にハッピーエンドを見出すことはできなかった。

 

しかし、だからこそ美しい。

 

通り一遍の舌触りのよい結末など必要ない。

アニメーションという媒体において、ともすれば不要な救いのないリアリティがもたらす快感をこそ私は求めている。

 

徹底的にフィクションたり得る世界で、敢えて生み出された不快なリアリティにこそ、嘘偽りない"ホンモノ"を感じられるから。

 

リズと青い鳥Blu-ray&DVDは 12月5日発売である。

 

映画 聲の形について。

何度でも観たいと思う映画、聴きたいと思う音楽。

 

そういったものに出会えるのはすごく貴重で、アラサーともなればそんな出会いも本当に限られてきて、気付けばプレイリストは昔の曲ばかりで埋まっていて。

 

ホルモンを聴いてブチ上がったあの衝動を。

けいおん!について恥ずかしげもなく想いをぶちまけていたあのたまらなさを、未だに追い求めている。

 

だからこそ、なぜか何度でも取り憑かれたように観てしまうこの映画を、取りこぼさなかったことがとてもありがたい。

聲の形の話です。

 

 

ひどく私的な感想文になる。

監督が山田尚子さんだとか、多分に漏れず声優の方々の演技がヤバいとか、植野がヤバいとか、植野の「久しぶり」でトリップするとか、書きたい事は山ほどある。

でもとりあえず、なんでこんなに観てしまうのかに絞る。

 

 

この映画は、ディスコミュニケーションの愛おしさを描いている。

人と人が100%理解し合うことなど絶対にできない。

その前提に立った上で、それでも通じ合おうとする。

その尊さを徹底的な純度で伝えようとしている。

 

描かれるのは始まりと通過点で、

分かり合いたいから、物語はまだ続いていく。

 

 

人が分からない。

分からない事は怖い。怖いから、逃げたい。

逃げた先に何があるのかなんて考えたくもない。

 

そんな生き方間違えた奴も、生きてりゃいつしか分かるかもなんて、諦めてたものを拾い上げてくれる物語だと勝手に思って何度も観てしまう。

 

 

マトモに生きられないと思った日から、意外と人生捨てたもんじゃないと思わせてくれる物語や曲に、僕は救われてきた。

 

聲の形は間違いなくその一つで、これからもたぶん観続けるのだろう。

 

 

全く違うテイストなんだけど、どうしてもこの曲がよぎる。

しんどい日々を生きるために、力をもらえるこの曲が。

筋肉少女隊で、「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」。

https://youtu.be/zpDlxZTaRKg